半世紀近く前、まだ私が20歳代だったときの恐怖の記憶が消えることがないからです。
冬からようやく春に向かう頃の日曜日の静かな昼下がり。
まだ幼かった娘と息子は二人で近くにあった大きな公園に遊びに出かけていました。
私はラジオのFM放送から流れる音楽を聴きながら、カセットテープに録音していたんです。
突然、3歳になる前の息子が玄関の引き戸を開けて帰ってくるなり、「お姉ちゃんが知らないおじさんと行っちゃった。」と。
その時の一瞬時間が凍り付いた感覚は半世紀近く経った今でも、忘れることはありません。
直ぐ受話器をもって110を回しました。
時計の針が動く音が聴こえるような
今も動悸が打って、震えて
電話口の警官に娘の着衣の特徴を尋ねられながら、着ていたセーターの色などを答えて
数台のパトカーのけたたましいサイレンが聞こえるまで
私の周りの空気は凍り付いたまま
警官からの「大丈夫です。発見しました。」の電話の声を聴いてから、空気の膜が破られて
固まっていた体を溶かして、外へ
パトカーの後部座席から元気な娘が降りてきたとき、私は泣きながら膝から頽れていました。泣きじゃくりながら、きょとんとした顔の娘を抱きしめて
このところの教師による盗撮や、卑劣な行為の報道には震えが止まらないのです。
私の脳裏にとっさに浮かんだ映像は 横たわっている幼い娘の姿だったのです
不安なご両親の気持ちは 痛いほどに
「お巡りさんでも、先生でも絶対について行ってはいけない。」とどれほど繰り返し、娘に言い続けたことでしょうか。
私は 震える思いで 報道を
ほんとうは見るのも おぞましく 心が 怒りで 落ち着かなくなるのです